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アクション最前線

2022/02/08

「普通のあなた」が社会のルールを変える方法とは?「政策起業家」をテーマに田村淳さん×フローレンス代表駒崎が特別対談!@『田村淳の大人の小学校』

  


タレントの田村淳さんが校長を務めるオンラインコミュニティ「田村淳の大人の小学校」。さまざまな業界のトップランナーをゲスト講師に迎えて開催される特別対談に、弊会代表の駒崎弘樹をお招きいただきました。1月7日に『政策起業家 ―「普通のあなた」が社会のルールを変える方法』を刊行したばかりの駒崎と、田村淳さんとの熱いトークの模様をお届けいたします。

政治家でも官僚でもない僕らがこれまで10以上のルールや法律を変えてきた

田村淳さん(以下、田村):今日は僕のオンラインコミュニティのメンバーに、駒崎さんの活動について解説していただきたいと思います。

駒崎:今夜はこのような場にお招きいただいて、大変光栄です! 今日は『普通のあなたが社会を変える方法』として、『政策起業家』をキーワードにお話したいと思います。政策起業家とは『民間の立場で社会のルールや制度を変え、時には法律まで作ることができる人』のことです。

まずは僕が代表理事を務める、認定NPO法人フローレンスについて紹介させてください。日本で初めて訪問型・共済型の病児保育事業を立ち上げたのち、小規模認可保育所や重い障害がある子どもを預かる障害児保育園、また、特別養子縁組などの事業に携わっています。そうした活動を評価いただいて、僕自身はNewsweek誌『世界を変える100人の社会起業家』に選出していただいたこともあります。今回は『実は社会って意外と変えられるんですよ』という話をしたいと思います。

田村:普通の人が社会のルールや法律を変えることってなかなか難しいと思うんですが、一体どんなふうにされているんですか?

駒崎:僕は政治家でも官僚でもありませんが、今まで10以上の法律やルールを変えることに携わってきました

一つのエピソードをお話させてください。

弊会の女性社員が育休を終え仕事復帰をしようとした時に、待機児童の問題で子どもを保育園に預けられず復帰できないと相談を受けたことがありました。

まだ当時は『待機児童』という言葉もそれほどメジャーではなく、そんなことが身近に起こったことにショックを受けた僕は、保育園を作ろうと奔走し始めました。 規制がとても多かったのですが、中でもハードルが高かったのが定員20名というルールです。

しかし、厚労省に問い合わせても理由が分かりませんでした。 『20人ルール』を変えられれば、都内でも空き家を利用して保育園を運営することができる。僕は知り合いの内閣官房副長官に提案し、厚労省の試験的事業として0-2歳を対象とした定員9名の『おうち保育園』を立ち上げました

みらい

蓋を開けてみたら、9名の定員に対して20数名の応募が来ました。

目の前にいる9世帯の子どもを無事に預かれて安堵しましたが、まだ試験的な事業です。しかも待機児童は日本中にいるわけで、安堵している場合ではありません。そこで、これを社会全体に広げようと考え、政治家や官僚に視察に来てもらいました。すると、当時の待機児童対策特命チームのリーダーが興味を示してくれて、当時の法案に入れ込んでくださったのです。

その後、法案は可決されて法律となり、小規模認可保育所は制度化されました。2010年には僕らのおうち保育園1園だったものの、2016年には1,600箇所、現在は約5,000箇所以上と日本全体に広がっています。

現場から遠い政治家や官僚に、課題とアイデアを伝える

田村:僕がすごいなと思うのが、自分たちから生まれたアイデアを実行して成功させ、それを国に対して『真似してください!』と言っていることですよね。

駒崎さんに初めてお会いしたとき、『僕のアイデアを国は思いつけなかったけど、それを広げるのは国の方が得意なんだ』っておっしゃっていたのが印象的でした。

駒崎:そうなんですよ。僕らが5,000もの保育園を作ろうと思ったら何百年もかかってしまいますが、国の制度を変えれば数年で作れます。世の中を変えるのであれば、その方が早いんです。

また、政治家や官僚の方々は、よいアイデアを常に探しています。また、彼らはもしアイデアを思いついたとしても、前例がなければ実現するのは難しい。税金を投入して事業をやる以上、失敗すれば責任問題になりかねませんから。そこで、僕らが前例を作り、『ほら、こうやればうまくいきますよ』と紹介することで、これ幸いとばかりに実現してくれるわけです。

田村:逆に政府からこの課題を解決してほしいというオファーはこないんですか?

駒崎:ほとんどこないですね。というのも、政治家や官僚の方は何が課題か見えにくいことが多いんです。

例えば、僕らは医療的ケア児と呼ばれる障害児の支援もしています。医療的ケア児とは、生きていく上で人工呼吸器や胃ろうなどの医療的なデバイスを必要とする子どもたちのことです。そして医療的ケア児は、看護師さんが不在でケアができないという理由で、幼稚園や保育園に通えないという実態があるんです。

その結果、親御さんたちは24時間365日子どもに付き添わなければならず、心身を病んでしまうケースが少なくありません。この問題をどうにかしなければと思い、医療的ケア児を専門で長時間お預かりする日本で初めての保育園『障害児保育園ヘレン』を立ち上げました。

ヘレン

この話を内閣府の担当部署の官僚に話をしたら、『僕は医療的ケア児を一度も見たことがない』と言われたんです。官僚の方にとって現場は遠すぎて、現場を理解しないまま政策を作らなければいけない、『むしろ教えてくれてありがとう』と言われました。

課題が何なのか理解しなければならないけれど、官僚の方々も忙殺されていて余裕がありません。その結果、メジャーな課題が優先されて、マイナーな課題は放置される傾向にあります。『これが課題だよ』と教えてあげるのも仕事のひとつだと思っています。

田村:なるほど。時代が進むにつれて、課題も多種多様になっていきますよね。テクノロジーが発達することで、僕らにも想像できない課題がどんどん出てくる。課題をソリューションとともに国に届けてあげると国も助かるのかもしれませんね。

駒崎:まさにその通りだと思います。国はバトンをつなぐ相手なんですね。

声をあげることは自分のためだけでなく、みんなのため、未来のため

田村:ここまでの話をまとめると、時代の変化に社会のルールが追いついていないということですよね。とはいえ、時代の変化はどの国でも起こっていることだと思いますが、社会が追いついていないのは、日本の仕組みの問題でしょうか?

駒崎:そうだと思います。例えばアメリカなら、民間から『こういう政策にしよう』などの意見を政府にぶつけられる環境があります。というのも、アメリカは大統領が変わるとホワイトハウスの官僚が総とっかえされ、彼らは民間のシンクタンク※などに行きます。そうして、民間で政策が分かる人や作る人がどんどん増えていく。すると民間から政府に提言できて、政策起業家も増えていくんです。

※政治、経済、科学技術など、幅広い分野にわたる課題や事象を対象とした調査・研究を行い、結果を発表したり解決策を提示したりする研究機関のこと

一方、日本は官僚として入庁したら、ずっとそのままです。そして、私たち民間人も政策を作るのは官僚がやってくれるものだと思っている。必然的に日本はさまざまな課題に対応するのが遅くなってしまうというわけです。

田村:なるほど。僕ら民間の立場からもルールを変えるつもりでいかなければいけないということですね。

駒崎:僕の妻は、東京都北区の区議会議員を務めています。あるとき、区内にあるトンネルの歩道が薄暗くて怖いので何とかしてほしいという連絡がありました。

トンネル

それを受けて妻が行政に働きかけたところ、1ヶ月半ほどで新しい電灯がついて明るくなったんだそうです。

その後、相談を受けた住民に報告したら感謝されて、『何年もの間ずっと暗かったんですよ』と言われました。つまり、何年間もそのトンネルについて誰も議員や役所に言わなかったんですよね。ほんの1ヶ月半で変わることなのに!

田村:僕は山口県下関市の彦島の出身なんです。下関から彦島には橋が架かっていて、帰省したときに『彦島』と書かれた看板の文字がめちゃめちゃ薄くなって見えなくなっていました。これじゃ観光客にも気づかれないし、彦島に行こうと思っている人のチャンスを逃すんじゃないかってツイートしたんです。

そしたら1ヶ月くらいで新しい看板に変わりました。最初は手間をかけて申し訳なかったかなと思ったんですが、よく考えると健全なことですよね。こういうことをやっていくといいということですか?

駒崎:まさにそういうことです。淳さんが声を上げることで、他の人たちが助かるんです。自分のためじゃなくて、みんなのためなんですから

だけど、ちゃんと意見を言ってくれる市民は少なくて、そもそもみんな住んでいる地域のことを変えられるとすら思っていないんですよね。言っても無駄とか、どうせ変わらないとか思っている。でも、声が発せられないと地域や社会に課題はないと判断されてしまいます。

「選挙に行っておしまい」でいいの?直接意見を届けることも民主主義

キーボード

田村:選挙に行っても、『俺の一票が社会を動かしている実感がない』という人は多いと思うんです。でも、選挙で選ばれた人に対して、『ここをこう変えてほしい』と言って動いてもらえたら、一票を投じるよりも実感が得られそうですね。

駒崎:そうです。選挙に行くことだけが民主主義ではないんです。日々の中で、議員さんにこうしてほしいああしてほしいと伝えるのも民主主義の大事な要素

私たちは微力かもしれませんが、無力ではありません。一人ひとりが社会を数センチでもよくできたら、それが大きな変化となって、子どもたちや孫たちの時代によい影響を及ぼせるのではないかなと思います。

田村:そう考えると楽しくなってきますね! オンラインコミュニティ内では部活動と称して、いろんな社会貢献とかゴミ拾いなどをやっているんですが、他の角度からも社会にコミットできるような気がしてきました。

駒崎:ぜひぜひ! 例えばゴミがいっぱい捨てられている空き家ってありますよね。そこのゴミを拾い続けることも大切なんですが、そこの写真を役所に見せて『ゴミ捨て禁止の看板つくりませんか?』と提案するなど、そもそもゴミが捨てられないような仕組みを作ることも大切です。

『溺れる赤ん坊のメタファー』という、社会活動を行うNPO業界では知っておくべきとされる話があります。あるところに旅人がいて、川で赤ん坊が溺れているのを見つけました。旅人はすぐ飛び込んで赤ん坊を助け、岸に置いて、川を振り返ったらまた赤ん坊が溺れているのを見つけます。助けて振り返ると、また赤ん坊が溺れている。その繰り返しで忙しく、実は川の上流で一人の男が次々と川へ赤ん坊を投げ入れているのにまったく気づかないという話です。

つまり、目の前にいる人を助けることは絶対にすべきことですが、それを生み出す社会構造があって、課題を起こさないようにアクションをすることも大事だということ。赤ん坊を投げ入れる上流の男を止めなければならない。ゴミの問題だったら、ゴミを捨てないような仕組みを作っていかなければなりません。

田村:目の前の赤ん坊を助けることももちろん大事ですが、大元を改善しなければずっと同じことを繰り返してしまうんですよね。

駒崎:そうです。目の前で起きていることだけでなく、構造にも目を向けることが大切です。

田村:社会のルールを民間の立場から変えていく、ということをたくさん教えていただいたので、これから僕たちのコミュニティでどう生かしていくか考えていきたいと思います。最後にメッセージをお願いします。

駒崎:実は僕自身も最初は制度を変えるとかそういうところからすごく遠いところにいたんです。

最初に自信を持ったきっかけは、ある区の市民委員になったことでした。会議に出ると、ある部署の課長が子育ての楽しさを伝えるために子どもに人気のキャラクターを呼んで数百万かけてショーをやります、というプレゼンをしていました。

画像

おかしいと伝えたところ、その瞬間空気が凍りついてしまって、かなり反省していていたんです。でも会が終わった後、他の課長が『僕は越権行為で言えなかったけど、よく言ってくれた』と言ってくれました。そして、しばらくするとそのショーがなくなったと連絡がありました。

『言えば変わる』という僕にとっての小さな成功体験でした。多くの方が知らないことだと思います。

私たち一人ひとりはまったく無力ではありません。この波がすこしずつ大きくなると世の中を変えることができます。色んな政策起業家がそこかしこで生まれてくれる、そのためにできることをしていきたいと思います!

まとめ

田村淳さんと駒崎の対談はいかがでしたでしょうか。

「社会のルールを変える」と聞くと、政治家や官僚の仕事で自分自身が関わるイメージをなかなか持ちにくいかもしれません。

しかし、田村さんが「地元の看板の文字が薄くて見えない」とSNSで発信してみたら見やすく改良されたように、あなた自身の声を届けることで、半径5mから社会を少しずつ良い方向に変えていくことができます。

また、声を上げる方法は、選挙に行くだけではなく、SNSで発信する・地元の議員に連絡をしてみる・区長にメールをするなど沢山のやり方があります。

皆さんもぜひ、自分の周囲で起きている少し困ったことやモヤモヤしているルールを変えるために一歩踏み出してみませんか?


1月に発売された新著『政策起業家 ―「普通のあなた」が社会のルールを変える方法』では、様々な社会課題に対してフローレンスが事業を立ち上げ、その知見をもとに政策提言を行い、制度をアップデートしてきた軌跡が綴られています。

これまで政官に閉じていたルールメイキングに誰しもが関わっていくためのヒントが満載の1冊です!

ぜひお手にとってご覧ください。

※書籍の売上はすべて、政策提言活動をはじめとしたフローレンスの活動に活用させていただきます。




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